皆さん、良い年末年始をお過ごしされましたでしょうか?
新年も始まり、間もなくバレンタインフィーバーに続き卒業式や入学式など多くの方が友人・知人・家族・恋人・お世話になった人などに贈り物をしたり、外食をしたり、ご馳走を食べたり、何かと消費の多い時期だと思います。日本はバレンタイン、ハロウィン、クリスマスなどもともと日本にないイベントもかなりポピュラーでお金を使ってお祝いをする方が多いと思いますが、そんな時こそ、この莫大な消費が実は見えないところで影響を及ぼしているかもしれない、、、なんて考えがよぎる方はまだまだ少ないんじゃないでしょうか?
消費とは誰でもできるとてもシンプルな行動です。分かりやすい消費行動は「買う」ですが、ひとりの消費が小さくても束になって大きな影響があり、私たちが住む地球の負担になっています。分かりやすい例えは地球温暖化ですよね。他にスナック菓子など安いパーム油を使っている商品はオランウータンの生息地を奪い、携帯の機種変の加速と共にゴリラの生息地もどんどん奪われ、過剰包装に使われるプラスチックが海洋環境を汚染し、私たちの生活の中で何気なく環境に大きな影響を与えている物が実は溢れています。象牙の問題も同様です。
1980年代、アフリカゾウが半減した時、その67%を象牙大国日本が消費しました。日本のような消費国からゾウを守るために1989年に国際取引が禁止されました。80年代と比較すると象牙の消費は減りましたが、中国が国内販売を禁止し、各国次々に止めている中、現在日本の象牙市場は再び世界一です。日本では80%がハンコとして今でも何気なく消費されています。よくある質問が、「象牙って日本はもう使ってないよね?」「一番象牙を使っているのは中国でしょ?」「日本は合法だから大丈夫だよね?」ですが、合法も違法も象牙が買われ続けると、金銭価値が生きたゾウの牙についてしまい、密猟のターゲットとして狙われ続けます。そして合法マーケットがある限り、違法マーケットのカモフラージュになるので、違法取引もなくなりません。
この活動をしていて、「アフリカの人たちを密猟しないようにもっと教育しなきゃダメだ!」「なんでもっとアフリカ人を教育しないんだ!」とよく日本人に怒られます。アフリカで育ち、20年近く仕事をしてきてすごく感じるのは「教育」の意味合いと期待のギャップです。というのは裕福な国では当然の解決策ですが、アフリカでは同じ意味をもたらさないです。アフリカゾウと同じ土地で暮らす人々のほとんどは今日の生活で精一杯、現金収入も少なく、日本のような裕福で物と情報の溢れかえった環境とは相反する状況です。厳しい生活をする彼らに環境問題は二の次、「教育」は贅沢、生活の中で優先順位は高くありません。それでも彼らの目線で森や野生動物と共存できるように私たちは取り組んできました。だからこそ、思うのです。密猟の原因となる需要の引き金を作っている先進国の消費者こそ教育で変えられるんじゃないでしょうか。これは象牙だけではなく、全ての野生動物商品に当てはまると思います。
12月23日(日)に民放の人気バラエティ番組で、包丁の持ち手の部分が象牙でできており、それがかっこよく人気商品だと紹介されていました。これを見て、クリスマスギフトとして料理好きな方に買った方もいるかも知れないです。反響を考えずに情報がテレビで流れていることから、まだまだ環境への意識がメディアでは追いついていなく、「面白ければいい」が勝ってしまうのが非常に残念です。以前取材協力をしたバラエティ番組に、スポンサーを気にして「日本の象牙問題を取り上げることはできない」と放送直前に言われがっかりしたことを思い出します。
話が逸れました。消費はシンプルな行動ですが、消費を止めるのはとても難しいことです。でも選択ひとつで世界が抱えている問題を解決に導く貢献ができます。象牙において言えば、ハンコを買う時に象牙を選ばない。消費は誰でもする行動だからこそ、買うものの選択で誰でも今すぐ社会と環境へ貢献できるアクションに変えることができます。
みなさんも新年から是非エシカル消費をちょっぴり意識してみませんか?